「Think!ロウゴ」提言発表会で最優秀賞を獲得した「北海道大学/山田チーム」が、2/24~3/1にかけて米国研修旅行に出発した。出発当日はあいにくの寒波、北海道から出発の2人のフライトが1日延びるというハプニングに見舞われたが、海外に出るのは初めての2人も無事翌日に合流し、フィデリティのスタッフも安堵。いよいよ米国研修旅行が始まる。この旅行は観光名所をめぐるものではなく、年金について考える「研修」旅行である。
次々と年金に関連する機関を訪問し、「年金」にまつわる仕事に携わる人々の話を聞き、意見を交える。「Think!ロウゴ」の企画参加前までは「年金に無関心層だった」彼らであるが、通常見ることのない米国の「年金」にフォーカスした研修はどのよう映ったであろうか。訪問先は、ハーバード大学、シンクタンク、社会保険庁、NPOなど。学生達のレポートから報告しよう。
フィデリティは1946年に現ジョンソン会長の弁護士だった父が創業。現在米国では公的年金(Social Security)制度の見直しが急務となっており、政府関係機関渉外チームが、政府に対して活発にロビー活動を行っている。日本に対するアドバイスは、もっと日本の投資家が増えることが大切と。 運用会社を訪れて詳しく話を聞くことは初めてだったが、投資(運用)とは、世の中の流れや事象など、あらゆるものに目を向けて総合判断しなければならないとても視野の広いことだと肌で感じた。
インターネットで簡単に自分のプランをシュミレーションできるmy planは、日本ではI plan.として紹介されているということで、改めて自分もやってみようと思った。

ハーバード大学の学生と共に講義を受けられてとても新鮮な気持ちだった。ほとんどの学生がノートパソコンでメモをとっていたことが印象的だったが、後から先生に尋ねると、文字を打つことに集中しすぎるため、禁止する先生もいるとのことだった。
学生が座る席は指定されており代返不能。教科書は百科事典と同じくらいの厚さ。しっかり使い込んだ形跡があるところに学生の学ぶ意欲の高さを感じた。講義は90分。前半30分は講師が話し、中盤以降は質問を考えさせ、学生と講師がその質問について討論する形式だった。連邦制のアメリカでは日本と税方式が全く違うことも勉強になった。

高齢化による東アジアの経済変化の研究をしている、笑顔が素敵な日本人、中嶋圭介さんと、同じく高齢化について研究している、上級特別研究員のリチャード・ジャクソンさんの二人が出迎えてくれた。彼らはアメリカの高齢化率には悲観的ではない。というのも45年後のアメリカは現在の日本に等しくなる程度だからだ。さらに45年後の現役世代も現代に比べて28%増加する見通しである(日本は39%減少)。研究結果によると、女性の役割のバランスが取れている国は出生率も高いのだそうだ(イタリア・ドイツ・日本はバランスが取れていないので社会福祉に関する将来に悲観的である)。
アメリカは女性の社会進出が活発な上、出生数も高いと意外なデータがあった。内訳は高学歴で社会的地位の高い女性の生む子供の数はやはり少なく、低所得の女性の子供が出生数の増加に関係しているとのことだった。移民という要素が色々なことに影響を与えるという背景もある。

ワシントンにある議員会館で対面できたのは一瞬だけであった。2mはあろうかという大柄な上院議員を前に、挨拶するだけで精一杯だった。会議の議長も務める議員は、近寄りがたいまでに風格とオーラを携えていて、つい引き込まれてしまいそうになった。
彼を支える30人の秘書の中で筆頭秘書の方と英語で面談をしたが、我々学生はついていけず終始寡黙になってしまった。

アメリカでも日本同様、パート労働者の福利厚生や年金保障が整備されていないことが問題となっている。パート労働者などの年金加入状況について、企業年金を導入している雇用主は約半分、その中で加入者は30%足らずというデータに驚いた。これにはエリサ法 (Employee Retirement Income Security Act) の労働時間の制限の問題が深く関係しているそうだ。
新政策を導入しても問題が簡単に解決するわけではなく、まだまだ根深い課題が残り続けるのだ。
アメリカの企業年金の支給方法は会社によって異なり、一時金で支払われるものがスタンダードで、日本の年金のように分割して払われるものはわずかの企業にしか認められていない。後者で支給を受けている人も3%しかおらず、90%は一括給付である。そもそも年金制度を理解していない人が多く、税金がかかることや、運用の仕方についてはあまり認知されていない。対策として幼少からの教育は重要であるが、この教育は国(州)の統一的なプログラムがないままに学校に委ねられている。教師の負担が大きくなってしまうことや、ファイナンスの専門知識を有する人が教育の現場で働きたいと思えるような労働環境作りは、非常に重要な課題である。

少子高齢化が日本ほど進んでおらず私的年金制度の発達しているアメリカにおいても、公的年金の財政状況は厳しい状態となっている。このまま何の対策(給付の抑制、social security taxの増税等)もなされない場合、2041年には連邦政府の積立金が底をつくという。若い世代の公的年金への不信感も増しているとのことから、官民の力を合わせた対策作りに着手しており、日本においても年金に関する教育機会の拡充など参考とすべき点は少なくないように感じた。

訪れた中で最もアットホームな雰囲気の機関。主に社会的弱者の保障の確保を目的に活動している。 年金専門のNPOでは米国内唯一の組織である。年金や法律に関するプロが約10人、サポーターが約5000人の組織だ。新しい企業年金の在り方や決済機関を設ける等の施策を行っている他、労働者保護の為に雇用主を教育すべきだと呼びかけている。ここで働いている人はお金、年金等に困る暮らしをしていないであろう高学歴の方だが、弱い立場の人を助けようと、みな誇りを持って仕事をしていて素晴らしい。
森戸先生が留学時代に講演をお聞きになったカレン所長を交えてお話をきいた。最も印象に残ったのは、個人、特に運用の仕方の分らない低所得層が、自分でDCを積立てて運用することに対して、懐疑的な姿勢であるということ。よって企業に責任を持たせるDBを推奨している。労働者の安全を守るという面においてリスクヘッジには良いかもしれない。アメリカではそもそも企業年金が給付される資格を有するためには必要な労働時間と労働期間の条件が定められている。この条件を緩和していく働きかけは労働者の安全を守り(いわゆる年金的ワーキングプアの減少)かつ、彼らの活動に則するものであるはずだ。

KI 080422-3
コーディネーター
フィデリティ投信 同行者
北海道大学 山田チーム