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2007.10 No.5

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No.5 インタビュー:見城 美枝子さん(エッセイスト)
仕事や子育てからの「解放」よりも「自由」よりも、もっと大事なこと

プロフィール

見城 美枝子さん けんじょう みえこ。早稲田大学大学院理工学科研究科博士課程単位取得。TBSアナウンサーを経てフリーに。現在、青森大学社会学部教授、日本リーダー養成協会理事長。尾瀬保護財団理事、国土審議会委員、三越社外取締役ほか、国土交通省、厚生労働省の委員など役職多数。また、豊富な海外取材経験や専門の建築の知識を生かし著作、講演、テレビ出演など多方面で活躍中。おもな著書に『会話が上手になりたいあなたへ』(リヨン社)、『会話が苦手なあなたへ』(リヨン社)など。

定年を迎えると、本人もまわりの人もよく「会社のため」「家族のため」に頑張ってきたのだから、これからは「自分のために」生きよう、と言います。それ、大きな勘違いだと思いますよ。人は人に支えられて生きています。自分のまわりの人たちは自分を映し出す鏡。会社の仲間や家族に映る姿をみて自分の存在を確かめ、自分の価値を判断することでプライドを持つことができたからこそ頑張ってこられたはずなのです。

鏡をたくさん持ちましょう

定年とともに、職場にあった鏡を失ってしまいます。だから、そこにしか鏡を持たなかった人、地位や肩書きにしがみついていた人は自分を映す鏡がない。プライドもステイタスも、自分の存在価値さえわからなくなってしまう人もいます。そんな状態で「さあ、仕事から解放されました。これからは自由にどうぞ」なんていわれても呆然としてしまうだけでしょうね。まず「解放される」という言葉がいけません。すがすがしい反面、「おしまい」「期限切れ」といった寂しさを連想させます。だから子どもが巣立ったときも「子育てから解放された」なんて言わないほうがいいですよ。さらに「自由に」生きることが、実はたいへん難しい。フリーな状態というのは、何をしてもいいということだけれど、何もしなければいずれ忘れられてしまうということなのです。

では、どうするか?ほかに鏡を持つことです。いろんな鏡に自分を映すことができれば、それぞれ評価も違って新しい自分を発見することができます。「リタイアしたら趣味を持ちましょう」という言葉を聞くたびに、私はそれだけでは何かが足りないな、と感じます。必要なのは蕎麦打ちや陶芸、絵画そのものよりも、そこに集う人たちなのではないでしょうか。だから、もし趣味がみつからなくても焦らないで。町内会や自治会でひと肌脱ぐ、という方法もあります。防犯や災害対策からいっても、地域コミュニティはとても重要。これまで培ってきた知識や経験、組織力、行動力、実行力を発揮するうちに、お互いに鏡になることのできる仲間と出会える可能性も大です。

どんな道を選ぶのか、まずは自分のタイプをよく分析してみてください。フリーな生活の第一歩は、自分を自分の鏡に映して、本当の自分と出会うことから始まります。

悩んだら「まあ、いいか」。で、笑ってみる

団塊の世代が青春を謳歌したころ、日本には欧米の文化が流れ込んで、若者はみな少なからずその影響を受けました。アメリカの個人主義の影響か、家族関係は希薄になりつつあります。でも、本当はアメリカ人の家族愛は強固で、ことあるごとにハグをして愛を確かめ合い、高齢の夫婦でもちゃんと言葉にして愛を表現します。照れくさくてそんなことができない日本人は、かわりに食卓や居間で親密な関係を育んでいたのです。家族はいちばん身近な鏡です。どうか家族の心の「たが」はいつまでもはずさないでください。

最後に……何か(誰か?)に向けて1日に何度も「まったく!(どうしようもない)」って言ったりしていませんか?「まったく」「まったく」で口がへの字になっていませんか? ときどき笑って「まあいいか」って言ってみましょう。悩みあぐねてどうしようもないときも、あきらめの「しょうがない」よりは「まあ、いいか」。明るくて、気分を変えるのによい言葉です。声に出して言ってみてください。

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